帯には「人前で教えるすべての人、必見!」とありますので、少なくとも教員である私にとっては使えるかなと思い、読んでみました。
序章 講師として必要な心構え
第1章 講義は事前準備で9割決まる
第2章 どんな人でも引きつける話し方
第3章 理解を200%深める方法
第4章 講義中ずっと集中させる方法
第5章 ありがちなピンチを切り抜ける方法
さすがに毎日授業を行っている私は、授業で緊張するということはほとんどありませんが、だからこそ人を引きつける授業方法を探しているのです。毎年、いろいろな方法をチャレンジしています。
教育学部を出ている方は「教科教育法」とやらで教え方を教わっているようですが、それ以外の学部出身の教員はそんなことを学んでいません。小学校・中学校の先生方は比較的教育学部出身者が多いでしょうが、高校の教員はむしろ教育学部出は少なく、教科制ということもあるので、その分野のプロパーではありますが、「教える」ことに関しては、個人の能力によります。
若いうちは、劇団員よろしく、台本代わりの教案に、びっしりメモを書きこんで、あるいは別の授業ノートを作って、何を教えるか、どう説明するか、セリフのごとくメモって、空き時間に必死に覚えて授業に望んだものです。先輩の先生方の授業をこっそりのぞかせてもらったり、ノートを見せてもらったりして、そのやり方をいろいろ盗んだりしました。その意味では、噺家とかの世界と同じように、教わるのではなく、見て盗んで、自分のものにしていったわけですね。
このような本に、もっと早く出会いたかったというのが本音ですね。もしかすると、昔も似たような本はあったのかもしれませんが、本書はかなり実践的で、よくある理論的なものではなく、著者の経験から得た具体的なやり方が書かれています。
特に感心したのは、「少なくてもよいので、絶対的な支持者を集める」という一言です。なぜなら、教員の世界でもそうですが、「その場にいる全ての生徒が、授業に参加すること」を良しとする風潮が未だにあるからです。しかし、よく考えればこれは無理な話なのです。生徒が40人いれば、本当に集中しているのは10人いればいいほうです。おまけに1コマ50分程度あることが多いでしょうから、その時間全部、全ての参加者がということはありえないのですが、研究授業などでは必ず「授業に参加していない生徒のフォローをどうするのか」が話題になります。
しかし、「パレートの法則」で指摘されているように、全体の2割が支持していてくれれば、それで成り立つのです。そもそも授業自体も、本当にポイントとなるのは、全体の2割なのでしょうから。
8割の生徒をほおっておいても良いと行っているわけではありません。50分の授業なら、その50分近くの時間を集中していることができる人間は2割だと言っているだけです。その2割の人間だって、毎時間毎時間集中していくことは不可能ですから、次の授業では、8割の方に入っている可能性が高いでしょう。ですから、教える側も、その日の授業のポイントになる2割をしっかり指摘してあげないといけません。本書は、その辺をきちんと踏まえています。
各章の最後にまとめがあるので、そのページをコピーしておいて、すぐに見られるようにしておくと良いかもしれません。
読み終わって、改めて自分の授業を振りかえってみると、この本に書かれていることに当てはまることが意外と多かったです。私もいつの間にか、すごい教え方かどうかは別にしても、それなりに「教える人」になっているようです。
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