2011年3月6日日曜日

大逆事件判決・処刑100年

1911年1月18日、大逆事件の判決が下り、1週間もしない24日に幸徳秋水ら11人が、25日に管野スガが処刑されていますので、ちょっと遅くなりましたが、大逆事件関連の書籍の紹介です。
昨年は、大逆事件100年ということで、いろいろと関連本が出たりしましたが、個人的には田中伸尚氏の『大逆事件 死と生の群像』と、黒岩比佐子氏の『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』が一番良かったと思っています。

大逆事件に関しては、高校の日本史の教科書にもでてきますので、名前だけは知っているという場合も多いでしょうが、詳細はあまり知られていないと思います。
今日では、大逆事件は官憲のでっち上げ事件だということが明らかになっていますので、処刑された12人はもちろん無実の罪で処刑され、実刑を受けた残りの人間ももちろん無実の罪により人生を狂わせられたわけです。
この事件以降、官憲による横暴が激しくなっていくわけで、今日の検察のあり方にもつながっているように思われます。

幸徳以下の実刑判決を受けた人々とそれを取り巻く人々について、詳細に調査されているのが、田中氏の著作です。私自身、本書を読んで初めて知った事実が多く、田中氏は実に丹念に粘りづよく調べ上げていて、尊敬の念すらいだきました。 今後大逆事件に関する著作の代表的なものとして、本書は取り上げられていくことになるでしょう。

黒岩氏の著作は、幸徳とともにこの時期の社会主義者として代表的な、しかしたまたま大逆事件に巻き込まれなかった堺利彦と、その堺が大逆事件による「社会主義冬の時代」をしのぐべく設立させた「売文社」についてを記したものです。幸徳や堺といえば、「平民社」が有名なのですが、本書を読むと、社会主義運動を語る上では「平民社」よりは「売文社」の方がより重要な存在だったことがわかりますし、堺利彦がどのような人物だったかということがはっきりわかります。

田中氏の著作では大逆事件の巻き込まれた人々の実像を、黒岩氏の著作では大逆事件に巻き込まれなかった人々の実像がそれぞれわかります。
ですから、大逆事件とは一体なんだったのかを知りたければ、田中氏と黒岩氏の著作は必読書だと思いますし、今後大逆事件について知りたいと思っている人には、この二冊は必ず進めるべきだと思います。それくらい良い本です。

『大逆事件 死と生の群像』 田中伸尚 岩波書店 2010年 2700円+税

『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』 黒岩比佐子 講談社 2010年 2400円+税






大逆...
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著者:田中伸尚
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パンと...
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著者:黒岩比佐子
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