我々一般の人間のもつ合戦のイメージは、どうしてもテレビドラマなどの影響が強いのですが、洋泉社歴史新書yの一冊である本書では、盛本昌広氏の手によって、我々にその舞台裏の真の姿を見せてくれます。
読んで思ったのことの一つめは、陣取や軍道の整備、兵糧の確保など、合戦は始まるまでが時間がかかるんだなあってことです。実際の合戦時間の何倍もの準備期間があって初めて戦が始まるわけです。いわゆる総力戦に近い状況で戦うため、、戦国大名は、日頃から領国経営を一生懸命にやらないと、そのための準備がままならないと言うわけです。いわゆる総力戦は、日露戦争が世界初のものと言われていますが、別の意味での総力戦(つまり、その大名の支配領域に住む住民のかなりの部分が、何らかの形で合戦に関わるというレベルでの総力戦と言う意味です)が、戦国時代には行われていたわけです。
本書のポイントのもう一つは、言葉です。本書の「はじめに」でも述べられていますが、選挙の時に使われる「選挙に出馬する」、「出陣式」や、「首相の退陣」などの言葉は戦国合戦は由来するものです。そのような言葉が戦国時代にどのような使われ方をしているのかなどを始め、中世社会の慣習までをも視野に入れた説明をしてくれています。そして、そのような言葉や慣習が今日まで生きているのであり、戦国時代から現在までの歴史のつながりということを改めて確認できました。
高校の日本史の授業では、戦国時代はそれほどじっくりやる時間はありません。生徒の中には、この時代になると喜ぶ子もいますが、受験を意識してやると、どうしても戦国は簡単に済ませて先に進んでしまいます。私が多少時間を取るとすると、ネタが多いという理由で、文化それも南蛮経由の言葉、カステラだとかコンペイトウだとかについて、少しやる程度です。ですが、本書を読んだら、少し細かいこと、特に今日にまで通じる言葉や慣習についてのことを、もう少し時間をかけてやっておくほうが良いのではないかと思いました。 やはり歴史のおもしろみは、その時代の資料を読み解くことなんだということを、生徒にも伝えたいと思いました(でも、きっとまた明日からは「教科書の太字」を教えていくんだろうなぁ。どこかで変えないといけないなぁ。来年からかな(笑))
『戦国合戦の舞台裏 兵士立ちの出陣から退陣まで』 盛本昌広著 洋泉社歴史新書y 2010年10月 860円+税
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