2010年10月18日月曜日

『週刊東洋経済』2010年10月16日第6289号の「知の技法 出世の作法」第168回を読んで

前回に引き続き、『週刊東洋経済』2010年10月16日第6289号からです。

佐藤優氏の連載ですが、この方は本当に凄いですね。

今回は「法学や経済学の知識を公務員試験で確認する」というテーマなのですが、まず、受験勉強に対してそれなりの効用を認めているとして、次のように述べています。

(前略)大学入試を経ずに一流私立大学に内部から進学した学生と、熾烈な競争試験をくぐり抜けて、同じ大学に合格した学生を比較すると、英語、世界史、日本史、古文などにおいて、受験を経た学生のほうが、知識の量が圧倒的に多いことからも明らかだ。
問題は、この知識が理解を欠く不完全な記憶に基づいていることだ。(中略)それに加え、頭の良い学生ほど「受験勉強は意味がない」と思っている。(中略)日本の大学生の多くが「大学で勉強したことは実社会で役に立たない」と思い込んでいる。これは大きな間違いだ。アカデミズムの成果を実務に生かすためには、独自の切り口が必要となる。

この後、ベネディクト・アンダーソンのナショナリズム論を踏まえて、尖閣諸島でおきた中国漁船の問題について考察しているのですが、そのあたりは今回は少し置いといて(佐藤氏の主張のメインは、このあとのこれらを踏まえた勉強法の部分なのですが・・・。)、私が注目したのは、「大学で学んだ知識は実務にも十分役立つ」という主張です。

基本的に、この主張に全く同感です。私も、世間一般ではいちおう一流とされている私学の大学に行っていたのですが、私が学生だった20年くらい前でも、付属高校からの内部進学者とそれ以外の学生とは、明らかに学力差があると言う話を先生から聞いたことがあります。つまり付属高校からの学生のほうが、知識量が少なく、何かの時にも頑張りが効かないということだったように記憶しています。

付属からの内部進学のシステムのことはよく知りませんが、今日の推薦・AO入試のような感じなのでしょうか?もし、そのような感じであるのならば、他の受験生がまだ勉強に必死になっている時期に、もう勉強しなくても良かったのだとすれば、学力差が出るのは当然でしょう。今日の推薦・AO入試の問題と同じです。
もう一つは、我々受験組の学生は、地方出身者が多かったため、、都会の人間に負けてたまるかという気持ちと、やはり内部進学者に比べれば、俺達はギリギリまで頑張って来たんだという自負心があったんだと思います。
佐藤氏の言うように、「受験勉強は意味がない」と思っていた部分もありますが、それを全く否定していたわけではなかったように思います(まあ、私がそれほど頭の良い学生ではなかったからなのかもしれませんが)。事実、高校での授業を理解できていたから、大学での話がわかったという経験がありますので、知識は身を助けるということを知らず知らずに経験していた部分もあります。少なくとも、私も周辺の人間は、内部進学組と受験組がいましたが、受験組の人間は似たような経験をしていました(何かの時に、そういう話を(「この話、高校の時にやったあれに関係しているんじゃない?」)したことがあります。その時に、受験組は納得してくれたのですが、内部進学組は「そんなのやってない、知らない」という話になったことがありました)。
ですから、「大学で勉強したことは実社会で役に立たない」とは思っていませんでした。当然、そのままの知識が役立つとは思っていませんでしたが、学問の基礎や物事の考え方、問題解決の方法を学んできたわけですから、社会に出てからも必要な知識は勉強する必要はあるが、その知識をうまく使って実社会で役に立てる術は、大学で学んだ知識だというふうに思っていましたし、今でもそうだと思っています。

ですから、佐藤氏の「大学で学んだ知識は実務にも十分役立つ」という主張には、大いに同感するワケです。「大学で勉強したことは実社会では役に立たない」と思っているから、バイトに明け暮れたりするだと思います。そう思って行くのなら、高いお金を払ってまで大学に良く必要があるのか、大学出でも、職がなく、フリーターや派遣になるのなら、何も大学に行く必要はないでしょうと思ってしまいます。4年間、かなりお金をかけてまで行く価値があるのが大学なんだから、ということでないと意味がないでしょう。
「大学の知識は役にたたない」と思っている人は、大学でしっかり勉強して来なかったのではないでしょうか。あるいは、そのあとの知識を生かす努力を怠っているのではないかと思います。
大学で学んだ知識を実社会で役立つものにするのは、実社会に出てからも学び続けることだと思っています。当然大学での勉強の延長ではなくて、自分が飛び込んだ業界の勉強や社会、経済、政治など、実社会で直面する内容です。

「大学で学んだ知識は実務でも十分役た」ちます。ただし、学び続けることがその条件なのです。(そうすると、きっと佐藤氏の勉強法が役に立つことになるのだと思います。知りたい方は、本誌を読んでください。一番最後に「この勉強法のメリット、デメリットについて考えていきたい。」とコメントされているので、もしかすると、今日発売の今週号でその辺のことを書いているかもしれません。あぁ、本屋さんに行って確認しないと。)

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