2010年12月19日日曜日

ドイツ西部で「宿題のない学校」誕生か?

12月17日づけのロイターニュースによると、ドイツ西部のノルトライン・ウェストファーレン州で、州議会で教育改革法案が成立した場合、学校での宿題がなくなる可能性があるとのことです。
この話題を日本の中高生が聞けば、うらやましがるでしょう。しかし、実際はそう簡単な話ではありません。

ドイツのいくつかの州で現在、1日の授業時間を増やすことにより高等学校での在籍年数を1年減らす教育改革を目指しているそうで、ノルトライン・ウェストファーレン州での教育改革法案もその一環であるとのことです。

ドイツの教育制度は日本とかなり違います。日本はアメリカと同じ単線型、ドイツなどのヨーロッパは複線型と呼ばれる複雑な教育制度です。
ウィキペディアを参考にドイツの教育制度を見ると、小学校が4年制で、その後大学へ行くためには、9年制のギムナジウムへ行くことになります。大学へ行く必要を感じなければ、5年制の中学へ行って義務教育を受けます。もっと勉強したいけど、大学へ行くほどではない場合は、専門技術も学ぶ6年制の中等実科・商科学校へ行くことになります。
大学へ行くためには、4年プラス9年で、13年教育を受けることになり、日本より1年長いので、おらそくこの1年を短縮するのが、現在進んでいる教育改革だと思われます。 

ただし、大学に進学するためには、アビトゥーアを受けなければなりません。このアビトゥーアは、ギムナジウムを終了した後に受ける国家試験で、大学に行くことができる資格です(ドイツ以外の中欧圏では大学入学資格という傾向が強く、高校卒業資格とは別ですが、ドイツでは中等教育修了資格、日本の高校卒業資格に当たります)。資格なので、一度合格さえすれば、一生使える資格です。しかし、2度までしか受験できません。つまり、2回落ちると、大学へ進学できなくなるわけです。

また、ギムナジウムでは毎年5%から10%(40人のクラスだったら、2人から4人)の落第者が出ます。だから、ストレートに進級して9年でギムナジウムを卒業できる人というのは、極端に言えば半分くらいしかいないというのが実情です。ただ、ドイツでは落第はそれほど恥ずかしいことではなくらしく、むしろアビトゥーアのことを考えれば、ギムナジウムの間にしっかり学力をつけておかないと困るわけです。

こんな教育事情ですから、宿題が無くなったとしても、生徒が勉強しないということはないでしょうね。むしろ、宿題がなくなる分、家庭学習をしっかりやらないとギムナジウムも落第してしまうし、アビトゥーアも受からないということになってしまいますので、このほうが学生はより勉強するでしょうね。

教育システムが日本と違うとは言え、日本の学生は、一部を除いてあまり勉強しないのが現状ですから、先日発表された PISAの結果が多少良くなったと言って喜んでいる文科省さん、同じ教育改革をするのならば、学習指導要領にもっと学生が自主的に勉強するようになる改革を盛り込むべきだと思います。おそらく、そのためには、大学入学制度を改める必要があるでしょう。

昔の日本の大学は「入りにくく、出やすい」でしたが、今は「入りやすく、出やすい」ですから、やはりきちんと学力をつけたものが進学する大学にしていく必要があるのだと思います。
ただこういう言い方をすると、日本では「格差」だとの批判が起こるでしょうから、ドイツの中等教育機関のように、大学を何種類かに分けて、基礎学問を学ぶ大学、実学を学ぶ大学など、学力レベルに応じた分け方ではなく、教育内容による分類で、センター試験での合格ラインを設置し、何点以上なら、小論文や面接などの2次試験を受けることができるという形式にしたら、どうでしょう。
そうすれば、学生は勉強しなければなりませんから、日本の学校でも宿題を出さずとも学生が勉強してくれるのでは、という淡い期待を持ちます(笑)

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