第1問は「死の文化」に関する問題です。
問1は法律に関する知識ですが、ローマのホルテンシウス法（前287年制定）は有名ですから、わかると思います。
問2は中国の副葬品に関しての問題で、白・緑・黄色を基調とする鮮やかな唐三彩の焼き物は、必ず教科書に写真が出ていますので見たことがあると思います。
問3も基本問題です。
問4はイスラームに関しての問題で、少し弱い部分かもしれませんね。エジプト－ワフド党、アラビア半島－ワッハーブ派の組み合わせはわかると思いますので、あとは時期ですね。
問5で兵馬俑は有名ですから知っているはずです。カタコンベはローマにおいてキリスト教がまだ迫害されていた時代のものなので、地下に作られたわけです。
問6は、トルコ系国家に関する知識としては基本的なものですが、そもそもトルコ系国家に関する知識が十分整理できていない受験生は悩んだかもしれません。ウイグルは東突厥を滅ぼし、キルギスに滅ぼされた国家です。
問7は初期キリスト教に影響を与えた宗教を選ぶものですが、キリスト教と同じ時期、同じ地域の宗教は選択肢には拝火教とよばれたゾロアスター教しかありませんので簡単ですね。
問8はダンテがフィレンチツェ出身だということは知っていても、そのフィレンツェがどのような都市なのかということについては、少し難しいかもしれません。ただルネサンスが毛織物をはじめとした貿易が盛んだった地域から始まったということは知っていると思いますので、そのあたりから解答を選べるかもしれません。
問9もルネサンスに関するものですが、これは難しいですね。ペトラルカが叙情詩集を作った、エラスムスが『愚神礼賛』を書いた、セルバンテスが『ドン＝キホーテ』を書いたというそれぞれの事実は知っていても、その正確な時期に関してまでは、よほど深く勉強していなければ正解にたどり着くことは厳しいでしょう。
第2問は国境に関する問題です。
問1のアは清とロシアの国境ですから南京ではないことはすぐにわかるでしょうから、キャフタ条約がどの皇帝のときかですが、康熙帝はネルチンスク条約で有名ですので、たぶんわかるでしょう。
問2でシベリア鉄道の建設は1890年代からです。
問3はロシアと日本との関わりに関する戦後史までの知識が要求されていますので、戸惑った受験生も多いでしょう。1956年鳩山一郎首相がみずからモスクワを訪問して調印していますが、これは日本史の知識ですね。
問4はポーランドの歴史ですが、比較的新しい時代の知識ですね。ワレサの連帯、チャウシェスクはルーマニアだと気づけたでしょうか。
問5でワルシャワ条約機構が東側のものだということはわかると思います。これに対抗するのが北大西洋条約機構(NATO）ですね。
問6はかなりモザイク的な問題ですね。それぞれの選択肢に関する正確な知識があるかどうかが問われます。バルト三国はこのようないきさつでソ連に入っていましたから、ソ連崩壊時にはいち早く独立したわけです。
問7は中越戦争の時期についてですが、アジアの戦後史はやや手薄な受験生も多いでしょう。中越戦争がカンボジア内戦（ポル＝ポチ派対反ポル＝ポト派の戦い）との関わりで起こったということなどもあまり知らないかもしれませんね。
問8は完全に日本史の問題ですね。日本史選択者にとっては簡単ですが、世界史選択者にとってはどうでしょか。ただaに関しては、現在でも問題になっている沖縄県をめぐる問題を考えるうえで知っておきたいことです。
問9は中書省だけは全く時代が違いますね。唐代の三省、中書・門下・尚書のひとつですね。
第3問は経済政策に関する問題ですが、問1は全く関係ないです。基本知識ですので簡単です。
問2はベトナムの国家に関する知識として、チャンパーは基本ですので簡単ですね。
問3は武帝の政策をきちんと理解しているかどうかですが、教科書は武帝の政策を中心に記述されていると思いますので、難しくないはずです。
問4でaがマカオ、bがバタヴィアであることはすぐにわかるでしょうし、つい最近（1999年）までマカオがポルトガルの支配を受けていたということを知っている受験生も多いでしょう。
問5はポトシ銀山しかありえません。選択肢がなくても解答できなくてはならないほどの基本事項です。
問6は両税法だけかなり時代が古いものですので、これはわかりやすいでしょう。一条鞭法は銀が中国に大量に入ったために銀で納税するようになった税制です。
問7は少し難しいかもしれません。黄埔条約がフランスに対するものであり、穀物法は保護貿易の法律であることがどれくらい理解できているか、正確に知らないと解答できなかったでしょう。
問8はドイツがフランスを包囲するためにロシアと手を結んだもので、当時のヨーロッパ情勢がきちんと理解できていないと答えにくいでしょう。
問9は難しいですね。第一次世界大戦で日本がドイツ領南洋諸島を占領したということは、世界史の教科書にはあまり記載がないかもしれません。日本史の教科書には記載がありますが、それでも日本史選択者でも知らない受験生もいると思います。
第4問は言語に関する問題です。
問1は地域横断的でかなり幅広い正確な知識が必要です。第一次日韓協約は1904年に締結されます。
問2は難しいですね。ここまできちんと学習できている受験生はそれほど多くないでしょう。
問3でアは1910年代の動きですから、文化大革命だと戦後になってしまいますね。イは啓蒙運動を武力で押さえ込むわけです。
問4は言語の分類の話なので、難しいかもしれません。南インドがタミル語を話すドラヴィダ系の人々が住む地域であり、北インドにはインド＝ヨーロッパ語族のアーリア人が侵入したことがわかっていないと解答できないでしょう。
問5はかなり細かい知識を問う問題で、特にaは難しいです。
問6はかなり地域横断的ですし、選択肢の時間幅も広いので、正確な知識が必要ですね。1は1998年、3は1971年、4は1962年です。ハンガリー事件は10月に起こっています。
問7は選択肢の時間幅がかなり広いですが、aは基本事項ですね。bは少し悩んだかもしれませんが、ザクセン選帝侯の保護です。
問8で「未回収のイタリア」はオーストリア領である選択肢になっている南チロルとトリエステですが、bはサルデーニャ島で全く違うので、迷うこともないと思います。
問9はアフリカの歴史ですが、知識としてはやや難しいですね。アクスム王国は紀元前後ごろから572年までの国家ですが、アフリカ南部のザンベジ川以南ではなく、エチオピアに栄えた国家です。「アフリカの年」は1960年です。AUは2002年、OAUは1963年の成立ですから逆ですね。ただし解答は比較的簡単だったと思います。
ところどころに、かなり地域横断的で時間幅も広い問題が見受けられました。あまり良い問題とは思えませんが、そう言っても受験生としては、幅広い正確な知識の獲得が求められることになりますし、かなり細かい知識の要求される戦後史の問題も出題されていますので、部分的にやや難しい問題が見受けられます。
大学入試の世界史の問題がこのようなもので良いのか、必修である今の高校世界史が現在の状態で良いのかについて、考える必要があるのではないかと思います。
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