昨日(1月14日)の地歴・公民のセンター試験ですが、新しい試験方法のトラブルが相次いだようですね(詳細はこちら)。このような人的ミスは数年経てば減るでしょうが、そもそもこのようなミスが発生するようなやり方は良くないと思います。来年は改善を求めたいです。
さて、いちおう専門の日本史Bについてですが、ひと通りやった感じでは、難易度は例年並みという気がします。ほとんどは教科書レベルの基本事項ですね(問題は大学入試センターのHPで確認してください)。
前年に続き、原始からの出題がありません。今後もこの傾向は続くのでしょうか?もしそうだとすると、教科書を古い時代から順番にやっていく時のやり方を、考えなおさないといけないかなぁ。
第1問は、各予備校の分析を見ると「文化財の問題」となっています。確かにリード文はそのような内容ですが、正直言ってそのようなことを意識しなくても問題は解けます。リード文にとらわれると、かえって難しいイメージが強くなってしまうかもしれません。
私ならば、「最近築城400年を迎えたお城」って、どこの事なんだろう?とか、修学旅行でいくんだったら姫路城?とか考えますが、受験生にはそんなこと無用です。
サクサクと問1を見ると、「屏風に書かれている絵」から考えるということです。どのお城かはともかく「最近築城400年を迎えたお城」ということですから、1600年前後の話ということですから、解答は時代が少し古いかなぁとも思いますが、3番しかないですね。4番は江戸時代の話なので、一瞬迷うかも知れませんが、「錦絵」ではないですからね。
問2は、リード文とは関係なく解答できます。つまり4択のうち、正しい二つを選択できれば良いわけです。平曲は琵琶法師がやるわけですし、ラジオ放送は大正時代ですから、正解はbとcなので、3番ということになります。
問3もリード文関係なしで、並び替えができればOKですね。法隆寺金堂壁画が焼失したのは戦後すぐの1949年、原爆ドームの世界遺産登録の正確な年がわからなくても世界遺産の話は比較的最近ですし、フェノロサは明治時代だとわかれば、あとは簡単ですね。
問4はリード文Bから考えて、アは選択肢の天守閣か堂塔かですが、城の中で高い部分は何か、イは戦国時代の城は石垣の代わりに堀や土塁か墳丘のどちらで防御しているかを考えれば自ずと分るはずです。これは簡単ですね。
問5はリード文は関係なく解けます。Xの江戸時代に新しく開発した田んぼを何というか、Yの江戸時代の街道に置かれたものを考えれば、bとdの組み合わせ以外にはありませんね。これも簡単です。
問6は誤っているものですから、選択肢の中で何が違うのかを見つけることができるかどうかです。唐・新羅の連合軍との戦いに敗れたあと、それに備えるための施設を海から遠い奈良盆地に作って意味があるのかってことに気づけば、簡単ですね。
第2問は古代からの出題です。
問1は「国造」と「郡司」の説明の正しいものを選べば良いわけです。「国造」は地方の有力豪族であり、「郡司」は律令になって「国造」から変わったものだということがわかっているかという点がポイントですね。まさか磐井が筑紫国造であったことを知らない受験生はいないでしょう。
問2は間違っているのを探すわけですが、木綿が室町時代の日朝貿易により大量に輸入されたものであることを知っていれば、簡単です。
問3は史料が「貧窮問答歌」だということがわかるかが最大のポイントです。それがわかれば、全く難しくないですね。
問4はリード文Bから、アは最初の勅撰漢詩文集が何だったか、風土記はそもそも漢詩文集ではないですね。凌雲集を答えさせる問題は、過去にも何度もありますので、過去問をしっかりやった受験生は全く迷うことはなかったでしょう。イも律令の話ですから、格式以外には考えられないですね。
問5はまずXの乙巳の変が645年であることがわかっていれば違うということがわかります。Yは表を見れば一目瞭然ですから、正解は3番ですね。
問6はXの日本の律令国家のモデルとなった国は「唐」以外思いつかないでしょう。Yも北東アジアにある国なのですから、「渤海」しか当てはまりません。
第3問は中世の問題です。
問1はアで鎌倉幕府第3代将軍は誰か、イの幕府の歴史をまとめた歴史書は何かという基本中の基本の問題です。3番しかないですね。
問2は御成敗式目についての知識ですので、これも簡単です。正解は2番です。
問3は鎌倉時代の後半の話で、迷う予知はないと思います。鎌倉幕府を苦しめた楠木正成も「悪党」ですものね。
問4はⅠの足利義持は第4代将軍、Ⅱの懐良親王が後醍醐天皇の皇子であることを知っていれば南北朝時代の話だと分るはずですね。Ⅲは「源道義」が足利義満だとわかれば、あとは並べ替えできますね。
問5はこの建物が「慈照寺銀閣」だとわかれば簡単です。東山文化を代表する建築様式は書院造ですね。
問6は少し細かい問題ですね。堀越公方を滅ぼして伊豆一国を手に入れたのが北条早雲だということを知っている受験生は多いと思いますが。
第4問は江戸時代の問題です。
問1はやや難しいですかね。特にアの農書はマイナーだと思いますので、「農業全書」と「広益国産考」のどちらかで迷う受験生は多かったと思います。農書は17世紀後半に成立し、「農業全書」が出版されたものとしては日本最古の農書だということは知っている受験生も居ると思いますが。
イは直ぐ後ろの文に「賤視された人々への差別意識」というのがありますからこれは分るでしょう。
問2はよく出題される農具の問題ですね。過去問をしっかりやっていればわかるでしょう。Xが深耕用の備中ぐわ、Yが脱穀用の千歯こきです。
問3は儒学者の知識があるかどうかですが、林羅山が家康に仕え、木下順庵が5代将軍徳川綱吉の侍講であることを知っていればOKです。
問4は農村に関する知識ですが、「百姓」概念が難しいかもしれません。「ひゃくしょう」=「農民」という現代的認識だと解答できないかもしれません。網野善彦さんの「百姓」は「ひゃくせい」と読み、いろんな職業を指すんだという知識を教えてくれる日本史教員が全国に多いことを期待します。
問5は史料が分からなくても解答できますね。江戸時代後半の社会の変化として、「商品経済の発達により、在郷商人の活動がさかんになり」、「質流れにより、大地主が現れた」ことを知っていれば、難しくないですね。
問6も史料がわからなくもOKです。Xで一般民衆が将軍さまに直訴できるのか、常識的に考えればわかるでしょうし、Yは幕末のことだということくらい受験生なら常識です。
第5問の明治時代の外交の問題です。
問1はXが台湾、Yが南樺太だということは直ぐにわかるので、Xは迷わないでしょう。樺太の歴史として、初めに日露両国の雑居になり、その後千島樺太交換条約でロシア領になったということを知っていれば、こちらもそれほど難しくないと思います。
問2も順番に読んでいけば、3番しかないことはわかるはずです。
問3は選択肢がグラフのそれぞれどの部分のことを言っているのかを確認していけば、当てはまらない4番が誤っていることはわかりますね。
問4は史料をしっかり読めば、答えは書いてあります。「而して之を担当するは其地方人民の義務と為す。」のところです。
第6問は昨年第5問の金子堅太郎の出題同様、近代の人物に関する問題で、市川房枝に関してです。これは少し難しいかもしれませんね。
問1はアで平塚らいてうと作った組織は有名だと思うのですが、どうでしょうか。イは治安警察法と治安維持法の違いですが、政治集会への女性の参加を禁止しているという内容程度ならば、治安警察法かなと判断できる受験生がどれだけいるか、少し疑問ですね。正解は3番ですが、正解率はあまり良くないかもしれません。
問2も政党政治のことを細かい事項まで知らないと解けないでしょう。これも正解率は良くないかもしれません。
問3はXの小林多喜二は数年前にも『蟹工船』が話題になりましたし、マンガ版も出ましたのでわかるでしょう。私もマンガは生徒に配って読ませましたから。Yも有名な天皇機関説の話だとわかれば美濃部は直ぐに出てくるでしょう。
問4は戦時経済の問題ですが、これも受験生ならば切符制の導入くらいは知っているはずです。
問5は勤労動員の問題ですが、これも軍需工場で働いていた学生が空爆などでなくなっているという話は全国でありますから聞いたことがあるでしょうし、朝鮮人や中国人の強制連行の話も知っていると思います。
問6は戦後まで手が回っていない受験生にとってはお手上げでしょうが、戦後をやっていれば、「追放を解除された政治家を首班とする内閣」が岸信介内閣だということはわかりますよね。
問7は、そもそも55年体制の話なのですから、2番は矛盾していることに気づくはずです。
問8はⅠが田中角栄のロッキード事件、Ⅲが吉田茂内閣だとわかれば難しくないと思います。
こう見ると、第4問、第6問がやや難しいかもしれません。ただ第2問と第3問は簡単ですし、昨年よりは政治史からの出題が多いので、プラスマイナスゼロで、やはり例年並み、平均点も昨年度並みかなぁという気がします。しかし昨年ほどではないですが、社会経済史、文化史の割合は多いですね。この傾向は気になりますね。
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